コラム

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疾患

膝蓋骨脱臼についてのおはなし

‍寒い時期になると片足が地面につかない、

歩くと痛そうにするという症例が多くなります。

今日は関節疾患の中でも多く見られる

膝蓋骨脱臼」についてのお話です。

実際の症例を交えてのおはなしになるので長いコラムとなりますが、今後の参考までにぜひ最後までお付き合いください。

 

膝蓋骨脱臼 (通称:パテラ)とは

膝蓋骨(わかりやすくいうと膝のお皿)が

正常な位置から外側または内側にずれてしまう状態で、

わんちゃん(特に小型犬)に多くみられます。

 

まずは正常な位置にある膝蓋骨のレントゲンをご覧ください⬇️

 

パテラの原因は先天性と後天性があり、

✅先天性はチワワ、トイプードルなどの小型犬は成長段階で骨や筋肉の形成に異常が生じて発症することがあります。

✅後天性は生活環境やケガ、たとえばフローリングの床で滑ったり、高い場所から落ちて衝撃が加わったりした際に発症します。

 

膝蓋骨が正常な位置からズレてしまうので

痛みや違和感から後肢を上げたり

歩き方がいつもと違うという症状が出ます。

 

スタッフが飼っているMIX犬(チワワ×プードル)のアリスも両足にパテラを発症し手術を行いました。

 

写真の子がアリスです🐶

 

パテラにはグレードがⅠ~Ⅳまであり、

Ⅰ・Ⅱは膝蓋骨が外れても手で押し戻してズレを治すことができます。

Ⅲ・Ⅳは膝蓋骨が常に外れている状態で、

膝蓋骨を手で押してもズレが戻らなかったり

前十字靭帯断裂の併発を起こすことがあります。

この頃になると痛みを伴うため歩行異常が認められ、

外科手術の検討をする必要があります。

 

我が家のアリスは8歳頃、

寒い時期に片足をあげて歩くようになり
(これを跛行といいます)

パテラのグレードⅡと診断されましたが小型犬ということもあり、

常に膝蓋骨が外れている状態ではなかったため

痛み止めとサプリメントで経過をみることにしました。

アリスは少しぽっちゃり体型なことろもあるので

足にこれ以上の負担をかけないようダイエットもしていました。

 

しかし10歳になったばかりの頃、

再び寒い冬の時期に跛行がみられ検査を行ったところ

パテラのグレードⅢと診断されました。

しかもアリスは両足のパテラです。

その時のレントゲン写真があります👇

 

 

正常な膝蓋骨(上)と比べ、アリスの膝蓋骨(下)は

両足とも内側にズレてしまっています。

痛いはずですが、アリスは家の中を歩き回ったり

ソファに上ろうとするためなかなか安静にできません。

当時年齢が10歳ということもあり、

本人が痛がる素振りを見せなかったため

手術を迷いましたが、家族と話し合い

名古屋の病院で手術を行うことにしました。

名古屋の先生は当院の院長のお知り合いでもあり、

わたしが動物の専門学校に通っていたときに

外科の授業でお世話になった講師の先生でもあります。

 

手術を終えたアリスです。

 

両足の手術だったのでギプスをしっかり巻いて絶対安静です。

なかなかカラフルでボリューミーな足になりました🐾(可愛いです)

術後はなるべく足に負担をかけないように10日ほどケージの中で過ごしていました。

 

 

普段は家の中を自由に歩き回っていたので大丈夫かなと心配しましたが

アリスはとてもおりこうでじっと安静に過ごしてくれました。

術後数日は自分で立ち上がることが困難だったため

トイレも支えがないとできません。

数時間おきにトイレのお手伝いをしましたが

足の違和感からなのかおしっこが1日

出ないときもあり圧迫排尿をしたこともあります。

 

自分で足を動かせずずっと同じ体勢でいると

褥瘡の原因となってしまうため

数時間置きの体位交換が必要ですが

アリスは上半身を器用に使い

自分で体位をかえていて大変驚きました👀❕

大変なこともありましたが、いい経験となりました。

ギプスが取れ、再度レントゲン検査をしたところ…

 

わかりますか?

内側にズレていた膝蓋骨がきれいに

もとの状態に戻っています!!!

 

手術前のレントゲン写真と比べると…

 

一目瞭然ですよね😲❕

このあとは術後の絶対安静中落ちてしまった筋肉を

取り戻すためのリハビリです。

院長に指導していただき毎日リハビリを行いました。

おかげで以前と同じように歩けるようになりとても嬉しかったです。

小さい体でよく頑張ってくれました🥹‪

 

アリスの場合はグレードⅢだったので

手術を決断しましたが、

体重が軽い子だと最初に外科手術を

選択肢にいれるのは難しいですよね。

柴犬など中型犬の場合は体重も重く

膝に直接負担がかかるため

手術を行うことが多いですが、

外科的な手術となるので

わんちゃんや飼い主さんの負担も大きいです。

犬種や大きさ、グレードなどにより

手術の術式が変わるため

獣医さんとよく相談して治療方針を決めましょう。

 

アリスが手術をして2年が経ちますが、

関節のサプリメントの服用は続けています。

アンチノールプラスというサプリメントで

関節だけでなく皮膚・被毛、心血管、腎臓、神経・認知機能の健康を維持する効果があります。

当院でも取り扱っておりますのでお気軽にご相談ください!

おかげでアリスは12歳になりましたが、

年齢を感じさせないくらいとても元気に過ごしていますよ☺️✨️

 

 

パテラには様々な原因がありますが、

発症させない・重症化させないために飼い主様ができる予防策があります。

 

🌟フローリングで滑った際に膝蓋骨が脱臼してしまうことがあるため、床にはマットを敷いて滑らないように工夫してあげましょう。

🌟爪や足裏の毛が伸びていると歩きにくくなり負担がかかるため定期的にお手入れを行いましょう。

🌟体重が増えると膝にかかる負担も大きいため適切な体重を維持しましょう。

 

このように、日常の些細なことから予防できることがあるのでぜひ意識してみてくださいね。

歩き方の異常というのは分かりやすいので異変を感じたら病院で診察を受けましょう🏥

 

長くなりましたが、最後までお付き合いいただきありがとうございました!